健康

認知症と孤独の関係と予防方法。中高年世代もリスクが増加中!

認知症と言えば、“徐々に病気が進行して記憶がなくなっていく、家族など、大切な人のことも思いだせなくなる怖い病気”というイメージをお持ちかもしれません。

確かに、自分が認知症になるか、ならないかは予測不可能….誰がなってもおかしくない、そんな風に思うはずです。

しかし、昨今は『認知症と孤独の間に深い関係があるのでは?』という研究が進んでいます。また、シニア世代だけではなく、40代以降に懸念されるアルツハイマー型認知症も近年は症例が増えてきました。

そこで、今回は認知症と孤独の関係、及び今日からできる予防方法をご紹介します。

日本人における認知症の人口

日本では65歳以上のシニア世代の内、何かしらの認知症を発症しているのは600万人強。65歳以上の人口が3500万人とすると、およそ6人に1人が発症していると言われています。
また、昨今は中高年世代で認知症が発症する、若年性アルツハイマーも社会問題として注目されはじめており、日本国内に3万5000人以上の有症者がいると推測されています。

いずれにせよ、認知症の発症原因は脳血管に疾患を負ったり、神経細胞に異常をきたすことが原因と考えられておりますが、具体的なメカニズムはまだ解明されていません。

そんな中で昨今取り沙汰されているのが、「認知症と孤独」の関係です。

実は深い関係がある!精神的な孤独が認知症に与える影響

近年認知症の研究において注目されているのが、「孤独による認知症の発症と進行」です。脳の記憶や認知能力を司る神経細胞は、一度死滅すると再生はほとんどされないことはかねてから分かっていますが、その神経細胞の衰えが孤独を感じることによって早まるのでは、という研究が世界で話題となっています。

もう少し具体的に説明すると、ヒトが孤独を感じると、独りで想像をする時間が長くなり、DMNと呼ばれる神経活動が活発化します。 しかし、その一方で脳細胞を委縮する動きも見られ、想像力を働かせる細胞以外は、脳の老化を加速させている臨床研究の結果も報告されました。

また、ここでいう孤独は精神的な孤独であり、物理的な隔離などは該当しないとのこと。つまり、「一人で暮らしている」ことが認知症と直接な因果関係を指しているのではなく、「自分が孤独を感じている」ことが重要となります。

認知症の最適な予防方法は「孤独を感じない」こと

認知症と孤独の関係性を分かったところで、予防方法はどういったものが考えられるのでしょうか。

コロナ禍で外出自粛を心がけ、コロナに罹らないように人と接することを控えている方は多いでしょう。令和3年6月現在で約1年半も「新しい生活様式」を続けてきた人たち、特に高齢者にとっては、よほど意識的に行動しない限り、

不活発な生活による様々な弊害

が現れてくる頃です。

具体的に言うと、

①意欲の減退・やる気の低下
3密を避けるため、これまでの日常生活の楽しみや行動を制限した結果、心身への刺激が極端に減ることで、意欲の減退・やる気の低下につながる。特に、高齢者にとっては、不活発な生活は脳機能の低下や抑うつ状態を引き起こしやすい。
また、年齢を問わず、「人と接しない、スキンシップをしない」ことは、孤独や孤立感を募らせ、メンタルヘルス的にも大きなマイナス要因になる。

②免疫力が減退する
「笑うと免疫が上がる」と聞いたことがないでしょうか?

「笑い」でがんへの免疫力向上 大阪の医療機関が発表

大阪府立病院機構「大阪国際がんセンター」(大阪市中央区)は2018年に、笑いの舞台を鑑賞した患者の1人は、免疫細胞の一つである「NK細胞」の血中の割合が実験前の約1・3倍に増えたことなどが確認され、鑑賞した患者全体でも免疫細胞の増加傾向がみられたという。また、患者の気分の変化などもアンケートし、緊張や抑うつ、疲労などの6項目全てで改善がみられ、がんの痛みについても改善があったという。

コロナ禍で毎日TVから、「今日の感染者は何人で、死亡者は何人、命を守る行動を」と流され、知らず知らずのうちに笑うことが少なくなってはいませんか?
コロナ に罹らないようにするための方法が、免疫を落とすことで逆効果になっては本末転倒です。不安を煽る情報から、適切な距離を取ることも重要です。

③筋力・体力・骨量が低下する
若い時と比べ、40代以上の中高年や高齢者が不活発な生活をすると、あっという間に筋肉や体力が衰えます。若い人が数日横になっているのと、高齢者が同じようにするのでは、その影響は桁違いです。

体の中で大きな筋肉である「太もも(大腿四頭筋)は、70代と20代を比べると、個人差があるものの、筋肉量はその半分と言われています。20代の半分の筋肉量ということは、両足で立っているつもりでも、実は片足立ちしているのと同じことであり、バランスを崩しやすいのも納得です。

筋力・体力がなく、活動減少による骨への刺激も少なくなると、高齢者ではふらついたり転んだりした時の骨折・寝たきりのリスクが高まります。

これら①〜③は互いに関連しあっており、さらに言えば孤独・孤立化にもつながります。
こうした、悪影響が悪影響を呼ぶ、「負の螺旋階段を下っていく」ような生活様式から脱しないといけません。

高齢者ご自身やと高齢者と同居している方、まだ40〜50代と若くても、自分が精神的に孤独だと感じている中高年世代の方は、是非今日からできる認知症と孤独の予防法を実践してみてください。

・オンラインでの会話や電話
・サークルやボランティア活動への参加
・散歩など有酸素運動
・達成感を感じることができる趣味 ・行動に頭を使うこと(運動やゲームでも可)

などがおすすめ。

もちろん家族や友人と一緒に過ごすことができたらなおいいのですが、一人で実践しても十分効果が期待できるでしょう。

認知症と孤独の深い関係

今回ご紹介したように、孤独が原因の認知症を予防する手段として大切なのは、物理的に一人でいる時間を作らないのではなく、「精神的に孤独に陥らない」ことです。特に適度な運動は、認知症だけではなく体全体の健康にとてもいいので、「最近運動不足だから」、という人も含めて、是非実践してみてください。

また、現在札幌健康管理室では、コロナ禍での「孤独・孤立化」による、認知症やうつ病などのメンタルヘルス疾患が今後激増してくると予測し、対応策として、人や地域と繋がり合う、【地域社会処方】というプロジェクトを進行中です。

ご期待ください!!

孤独と脳の関係──想像を司る部分が発達、認知症リスクに影響かhttps://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2020/12/post-491_2.php